発掘!

CERO発足が決まった頃、何かテキストを書いたような気が、という事で探してみました。
2002年9月に書いたものがあったのでこっちに転記。脚注は全て今回転記するにあたり追加した部分。

付記1:TVゲームソフトのレーティングについて

前回*1までが当初目論んでいた内容の全てであり、本来なら完結するはずだったのだが、第3回目を公開直後、CESAがTVゲームソフトにレーティング制度を導入すると言う発表があった。このことは今回のテーマで扱ったタイトルとも関わってくる問題だと思われるので、現時点で判っていることと、それに対する個人的見解をここに示しておく。
今回導入されるレーティング制度の概要は以下のようなものだ。

  1. 分類は「教育系/データベース系ソフト」「ゲーム・全年齢対応」「同12歳以上推奨」「15歳以上推奨」「18歳以上推奨」の5段階。
  2. 審査は希望するメーカーの自主申告に基づいて行う。
  3. 法的根拠が無いため拘束力は無く、購入時の身分確認などは不要。

この内容を見て相反する印象を同時に感じたので、両者を併記しておく。
まずこのレーティングを否定的に見る観点から。
随分妥協したものだなぁと言う印象を持った。1)の年齢による線引きに関しては、議論するつもりは無い。だが、かつて存在していた「18歳未満購入禁止」という区分が無いのは、どうしたものか。これでは、アダルトゲームを移植するとしても適用されるであろう区分は「18歳以上推奨」止まりである。2)にあるように、自主申告と言うことは審査を受けずに発売されるケースもあるだろう。(もっともレーティング制度が認知されれば、むしろ審査を受けないことは商品イメージにとってマイナスに働く公算が大きいので、自主申告であることもとりあえず不問にすることにする)
けれども、結局3)にあるように法的根拠が無いため購入者の年齢を制限することは出来ない。これは、「年齢制限をかけたゲームは発売しない」と言う、これまでのSCEのポリシーに見事に一致する。結局のところ現状を追認するための制度であって、TVゲームのイメージ向上を目的とした施策に過ぎないとさえ思える。
そのため、「18歳以上推奨」とされているソフトを18歳未満のユーザーが購入することは十分に考えられるし、先日ソフトバンクパブリッシングがインターネット上で行ったアンケートでも、「自分が18歳未満と仮定して、18歳以上推奨のソフトを購入するか」と言う問いに対して「購入する」と答えたユーザーは多く、その実効性には疑問が残る結果となっている。

今回のテキストでの私の結論の根底に、家庭用TVゲームにアダルトゲームは不要と言う思想を感じ取る方があるかもしれない。しかし実際のところを言うと、私自身は不要とは考えていないが、同時に必要であるとも思っていない。けれども、存在を認めるならばそれなりの条件が必要である、というのが「現在の」自分の立場である*2
VHSビデオやLD、DVDやパソコン、インターネットなど、新しいメディアの普及の影にはアダルトコンテンツの存在がある、と言われてきた。TVゲームにおいても今回取り上げたように、PC用のアダルトゲームの移植は過去数多く行われてきた。けれども、「スーパーマリオブラザーズ」「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」等といったゲームが起爆剤となって拡大してきたTVゲームの場合、ギャルゲーにしろエロゲーにしろ*3、その功績は全体から見れば微々たる物ではなかったか?仮にこの種のゲームが無かったとしても、TVゲームそのものは今と同等に普及できていた可能性は十分にあると思うのだ。
だがTVゲームが普及した今となっては、過去の可能性について議論をする意味はそれほど無いと思うし、現実的な問題としてTVゲームのプレイヤーである私たち自身、とりわけ子供たちに対するさまざまな影響を懸念する声が増えている。そう言う社会的な事情から見ても、暴力・性表現については慎重であるべきだと思うし、何らかの規制があって然るべきである、と考える。そこで問題なのは仮に購入者を制限するとして、何処まで実効性があるか、と言う事だ。パソコンソフトに比べれば取り扱い店舗数・販売本数が極めて多いゲームソフトに年齢制限をかけて確実に規制できるかを考えると、確認方法と詐称対策、販売店への周知、中古販売店への対策など、現実的には大なり小なりの問題が出てくるのではないだろうか?と思えるのだ*4

次に積極的に評価する考え方。
それはそもそもこの制度が、購入者の年齢を制限する事ではなく、「一定の年齢以上のユーザー向けの内容が含まれている」事をユーザーに示す事を目的にしている(と思われる)ところにある。
今から1年半ほど前、このようなテキスト*5を書いた。今回のテーマに関わってくる部分を抜粋する。

どのような人が手に取るか、と言う事に対する配慮の無さの一つの結果が上の話題であり、あるいは最近問題にされているTVゲームの暴力描写ではないかと思います。「青少年社会環境基本法」によってTVゲームの表現にも法の規制が掛かるかもしれないにも関わらず、この法律の対象となる他のメディアに比べ、ゲーム業界の動きは静かすぎるように思います。けれども、今必要なのは「規制すること」だけなのでしょうか?
今やTVゲームで遊びながら育った世代が子供を持つようになってきました。しかし、その様な親子が、安心して遊べるTVゲームがどれほどあるでしょうか?(実は、これが初投稿に「テトリス*6」を選んだことの理由の一つです)最近、その様な観点から開発されたゲームソフトが数本発売になっていますが、それらの登場で気付いたことの一つは、TVゲームのパッケージにそのゲームの対象年齢表記があれば、ヘタな規制よりも安心感を持ってユーザーに選んでもらえるのではないか、と言うことです*7
文字の読めない子供にRPGは向かないでしょうし、ゲームの中のメッセージに漢字が使われていれば、小学校低学年、或いは幼稚園児がプレイするには親の同伴が必要でしょう。会社経営がテーマのゲームであれば、恐らくもっと高い学力が必要です。
今のTVゲームは童話の絵本、スポーツ雑誌、ファンタジー小説、経済学の専門書、格闘コミックを同じ棚に並べた本屋のような状態だと思うのです。
規制に関する議論を疎かには出来ませんが、それ以外に打つべき手が無いとは思えません。

つまり、各々のゲームの内容に照らし合わせ、そのゲームを楽しめるであろう年齢を示すことで、購入者に安心感を与えることが出来るのではないか、と書いたのだが、ようやくこの発想が業界の制度として現実のものになった、と言う事だ。規制するのではなく、ユーザーに提示することを目的としたレーティング制度は、アダルトゲーム云々の議論とはまた別の視点から評価したいと思う。

さらに、公開するか悩んでアップ直前で放置していたテキストを発見。作成日が直ってません(笑)が向こうにそのままアップ。
こちらも転記します。

付記1:TVゲームソフトのレーティングについて その後

TVゲームのレーティングを行う「コンピュータエンターテインメントレーティング機構(以下CERO)」が発足してそろそろ2年になる。前回付記したこともあるので、これまでの活動などに付いて記しておく事にする。

2004年3月までの実績として、約900タイトルの審査を実施、約7割が全年齢対象、残りを12歳以上のレーティングが適用されている、との事。また4月にはレーティングの根拠となる表現の内容をアイコン表示する事が決まった(アイコン付の商品が市場に出るのは6月頃から、との事なので既に始まっているはず)。
アダルトPCソフトが「美少女ゲーム」の名のもとに家庭用TVゲーム機に移植される事は個人的には好ましく思っていないことは既に繰り返し述べているが、レーティング制度がメーカー・販売店・ユーザーの間で定着していけば、

  1. メーカーは全年齢のユーザーが触れると言う前提に捕われる必要が無いから内容・表現に幅を持たせることができる
  2. 売店はこれらのアイコン・マークを頼りにして品揃え・陳列を行う事で客層にあった売り場作りができる
  3. ユーザーはより適切な選択を行う事ができるようになる――適切なソフトを買い与える事ができる、と言うほうが適切か?――

と言うメリットがある。
とは言え、以前PS/PS2で採用されていたマークがついているソフトを好んで購入するようなユーザーがいたという話も聞くし、先ごろ長崎県佐世保市で起きた女子児童(=小学生)による同級生殺害事件ではR15指定(15歳未満閲覧不可)を受けていた「バトルロワイヤル2」を観て殺害方法を検討したとの報道もある。この件については、不謹慎な言い方ではあるが殺害方法をBR2を観て決めたと聞いて「今回の事件でTVゲームが叩かれる事は無さそうだ」僅かながら安堵した事は事実だ。TVゲームはどうしたらいいかを考える時間を多少なりとも得ることが出来たのではないだろうか。
どのようなメディアであれこの種の制度は我々ユーザーも適切に運用する努力が必要である、と言うことなのだと思う。

なんか悪いトコばっかり予想通りだなぁ。

*1:http://www2.odn.ne.jp/~aac26670/_review/galgame/galgame-050.htm 全文は http://www2.odn.ne.jp/~aac26670/_review/galgame/ から

*2:今も基本的に変わってません

*3:このテキストでは、同義で扱われるケースを多く見かけるこの二つの言葉を別のものとして扱っています

*4:結局当時の予想通りとなったようだ

*5:毎日インタラクティブ内「ゲームクエスト」で、アルファシステムの芝村氏とのインタビューの感想として投稿したもの。MSNとの統合に伴い現在は削除されている

*6:こちらは移転後も残っている。 http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/game/etc/library/ps/te/20000810gamlib004023000c.html

*7:レーティング制度を連想するかもしれませんが、この当時考えていたのは玩具類の対象年齢表記の方が近いです